平成28年2月6日(日) 世田谷区歯科医師会・玉川歯科医師会共催で世田谷区民館別館 三茶しゃれなーどホールにおいて、区民向け口腔がん予防講演会「口腔がんをよく知ろう ~口腔がんの予防と早期発見~」が開催されました。
講師として日本大学歯学部口腔外科学講座 顎顔面外科分野 金子忠良准教授をお招きして、口腔が んの予防と早期発見についてお話して頂きました。
冒頭で世田谷区健康推進課よりがん早期発見への取り組みの解説がありました。
世田谷区歯科医師会、玉川歯科医師会それぞれの会長挨拶と区民に対するそれぞれの歯科医師会 の取り組みの紹介の後、講演に入りました。以下、ご講演の要旨をまとめさせていただきました。
がんの死亡率は国により増加、減少の傾向が違い、日本とイタリアではまだ増加傾向 。
日本は胃がん大国から欧米型のがんに変化をしている。
◎がん細胞とは?
がん細胞は無制限に増え続ける 不死化 (テルミナーゼ)
遺伝子のミスコピーにより癌細胞の芽が出来る
癌細胞の芽から早期がんまで1cmのものが出来るまで10~30年(平均9年)
がん化を起こすイニシエーター (引き金)タバコ、紫外線、食物、ウイルス他)
特にタバコは主流煙よりも副流煙にはベンゾピレンなどが含まれ更に危険
酸化防止剤や輸入果物などの表皮に塗布されている防カビ剤などもイニシエーターになりやすい
p53遺伝子が正常に働いていれば癌細胞の芽を抑えることができる
正常細胞は自然に老化してアポトーシス(プログラミングされた死滅)を起こす
がん遺伝性は、細菌、ウイルスが関与しているものは遺伝しリスクをあげる可能性がある
体質では肥満はリスクを上げる
⚪どうして発がんするの?
第2段階プロモーション(推進) プロモーター(タバコ、熱い食べ物、肥満、糖尿病、活性酸素など)
⚪がんにならない人となる人 DNAの損傷によるがん細胞の芽は1日5000個
免疫はイニシエーションとプロモーションの過程をブロックする
がんにも抗原性があるので免疫反応が起こる
◎口腔がんとは?
色々な診断画像の紹介を行い、免疫機能の重要性やカンジダ症(真菌)、アフタなどとの鑑別
口腔がんは微増傾向、喉頭癌のみ禁煙習慣の増加により減少
⚪口腔がんの特徴
2015年約7,800人 50~60歳が多く男女比は1:8で90%は扁平上皮癌(口腔粘膜の細胞)
早期がんと進行がんでは治療や予後が変わる
がんは糖代謝が盛んなのでPET-CTは有効だが小さい物には不向き
口腔がん検診による2次予防(歯科での検診)の必要性
⚪治療法の種類の説明
分子標的薬(がん細胞の増殖を抑制)による免疫低下を防ぐ治療
化学療法の効果との免疫低下の問題
口腔がんではがんになる原因も口腔内にあるので周術期の原因除去のための補綴的も必要
光線力学的療法(PDT) 静脈よりレザフィリンを注射しダイオードレーザーを当てがん細胞だけ叩く
但しレーザーが到達出来る深さがあるので表在性がんに限る
がんも生活習慣病の中に入るので禁煙、食生活、ストレス発散などにより予防も可能である
抗酸化作用のある食習慣を意識する
トマト、ニンニク、クランベリー、ウコンなど 40歳を過ぎたら生活習慣を見直し
(1次予防)症状が出てからではなく定期検診を受けるように する
予防法・危険因子・疑うきっかけ(色・形・硬さ等)・症状(しみる・腫れ・痛み) 反対側や他の部分と比較する・前癌病変・実際の症例報告
◎かかりつけの歯科医を持つ 継続的な口腔内の管理をしていただけるメリット
講演では、口腔がんについて普段から知っておくべき知識を理解するために、専門的知識の内容 にも少し踏みこんで細かく解説をしていただき、口腔がんの出来る部位やセルフチェックの方法、 代表的な良く間違う症例なども交えご解説頂きました。
当日は、多数の区民の皆様にご参加、ご聴講頂きありがとうございました。
又、参加された区民の方の質問にも丁寧にお答えされ、閉会後も質問を個々に受け付けられた金子 忠良先生に大変感謝致します。
世田谷区歯科医師会 口腔衛生センター IT担当 田中克佳